方言ニュース2016年9月16日パート2・疑問文の係り結び「が〜ら」

ぐすーよー、ちゅーうぅがなびら。なまー、ラップランドから ヘルシンキまでぃぬ 電車んかい 乗《ぬ》とーいびーしが、9月16日ぬ 方言ニュースぬ パート2 紹介さびら。短《いんちゃ》さいびーしが、いっぺー うむさる 「係り結び」んでぃる、うちなーぐちぬ 文法ぬ 使《ちか》らっとーいびーくとぅ、是非《じひ》 読《ゆ》でぃくぃみそーり。

(未《なー》だ 読《ゆ》でーうぅらんれー、パート1 読《ゆ》でぃくぃみそーり。)

前回のポストでは、糸数昌和先生による9月16日の方言ニュースの最初のユンタクの一部の書きおこしを紹介しましたが、このポストでニュースに入る前の残りのユンタクの書きおこしと解説をまとめてみました。

非常に短いものですが、最初の文には面白い文法が出ていますので、少し説明しましょう。ウチナーグチの疑問文は、疑問詞(何、どこ、誰など)が入るものだと、基本的には「が」で終わります。この「が」は、文法的に動詞終止形の「ん」の代わりに使われます。例えば、「行きます」の終止形はウチナーグチでは「いちゃびー」となりますが、「どこに行きますか」は「まーかい いちゃびー」となります。

しかし、この文法は、基本的に主文の、実際に相手に答えを求めているように使われる疑問文に限られるようです。補文(埋め込み文)では、別の文法パターンが使われるようです。例えば、「どこに行きますかわかりません」の「どこに行きますか」は主文ではなく、補文なんですね。これをウチナーグチに直すと、「まーかい いちゃびー わかいびらん」となります。補文では、「が」は疑問詞の近くに使われ、動詞の最後に「ら」が使われます。補文以外に、「いったい〜だろうか」のような意味を表す文にも使われるそうです。

この現象は、昔から日本語学者・言語学者から「係り結び」として分析され、ウチナーグチにおける有名な文法の特徴です。これについての細かい研究も多いけど、最近ではこういうパターンがだんだん使われなくなりつつあるようです。しかし、今回の書きおこしの最初の文に出ていますので、言語学者として大変喜びました。言語学者って、こんなので喜びますよ。多分。

さて、音を聞きながら、書きおこしを読んでみてください。

えー うり しむしが、 たいふーじゅーろくごーん まーんかいが みぐてぃ いちゃびーら いっぺー しわ やいびーん。
ええ それは いいけど、 台風16号も どこに 回って 行くのか とても 心配 です。

しむしが
済むけど。動詞「しむん」(済む)の現在・尾略形に「しが」(けど)が付いた形。ここでは、「いいけど」と訳しました。

〜ん
〜も

まーんかいが
どこにか。「まー」(どこ)+「んかい」(に)+「が」(か)。後で出てくる動詞「いちゃびーら」の接尾辞「ら」に結ばれて、いわゆる「係結び」の構文をなしている。

みぐてぃ
回って。動詞「みぐいん」(回る)のテ形。

いちゃびーら
行きますか。動詞「いちゅん」(行く)の丁寧・現在形「いちゃびー」に、疑問詞の係助詞「が」と結ばれる接尾辞「ら」が付いた形。

しわ
心配

やいびーん
です。動詞「やん」(である)の丁寧・現在形。

ぐすーよーん きー ちきてぃ くぃみそーりよーさい。
皆様も 気を つけて ください。

ぐすーよーん
皆様も。「ぐすーよー」+「ん」。「ん」は「も」に相当する助詞。

きー ちきてぃ
気をつけて。「ちきてぃ」は動詞「ちきゆん・ちきーん」(つける)のテ形。ウチナーグチには日本語の「を」に相当する格助詞はない。

くぃみそーりよーさい
ください。動詞「くぃーん」(くれる)の連用形「くぃ」に敬語「みせーん」の命令形「みそーりよー」に丁寧の「さい」が付いた形。

とーさい あんしぇー いちじぬ ほーげんにゅーす うんぬきやびら。
さあ それでは 1時の 方言ニースを 申し上げましょう。

とーさい
沖縄でよく耳にする「とー」を丁寧にするため「さい」をつけた形。

うんぬきやびら
申し上げましょう。動詞「うんぬきゆん・うんぬきーん」(申し上げる)の丁寧・志向形。「〜やびら」で、「〜ましょう」。

これからは、ニュースにやっと入るところですね。また次回のポストでその書きおこしをアップしますので、それまで原音を聞いて自分でチャレンジしてみてください。

あんしぇー、また あとぅから やーさい!

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